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錆びつかない努力

検定対策を目的とする簿記においては、当然のように貸し倒れが発生し、当然のように貸倒引当金を取り崩している。
時には貸倒損失として処理すべきものも発生しているのだが、その違いを理解している人は果たしてどれだけいるのだろうか。
勿論、実際に出題された場合は多くの人が正しい処理を行っている。
私もその一人だったし、その違いを理解している筈だった。
ところが、いざ実務に携わってみると「肝心の知識が生きていない」ことに唖然とする。
具体的にいうなら、当期に発生した貸倒を処理する際、その大半が「貸倒損失」で処理される理由がわかっていなかったのだ。
「貸倒引当金」勘定には十分過ぎる残高がある。
けれど、その多くは一度も取り崩されることがない。
いや、業種によっては当たり前のように取り崩されているのだろうが、少なくとも私が関わっている法人では「貸倒損失」で処理している。
勿論、これにはちゃんとした理由が存在する。
それは貸し倒れの発生時期。
本来貸倒引当金というのは「金銭債権の前期残高」に対して設定されるものである。
計上時点においては「損失の見積額」に過ぎず、実際に貸倒が発生した時点でその損失を補てんする意味で取り崩す形となる。
一方、当期の売上債権は貸倒引当金の設定対象とはなっておらず、仮にその全部(若しくは一部)が回収不能となった場合、「当期に発生した損失」として「貸倒損失」で処理しなければならない。
間違っても「貸倒引当金」を取り崩してはいけないのである。
ただそれだけのことなのだが、それが解らないのが現実というもの。
事実、私よりも会計知識の深い人より「何故貸倒引当金を取り崩さず、貸倒損失を計上するのですか。」と質問されたことがある。
きちんと会計理論を学んだ人ですら気付かないことがあるのだ、まして検定試験用の勉強のみを行ってきた人間が見落とすのは仕方のないことなのだ。
頭ではわかっていても、情けないと感じるのが人間というもの。
せめて知識が錆びつかないよう努力しなければな、と痛感する今日この頃だ。